Keep Innovative Spirits Alive,
Forged by Quest for Curiosity

好奇心と探求心が生み出す「新しいもの」

人間は好奇心と探求心にあふれた生き物だ。謎や不思議を目の前にすると、「なぜ、こうなるのか」「その先には何があるのか」と追求せずにおれない。また知識や技術の壁にぶつかると「どうすればできるのか」「もっと優れた方法はないか」と頭を働かせ、新たな知識や革新的な技術を手にしたりする。これは人間の知性が生み出した本能的な欲求なのだろうが、こうした心のベクトルがイマジネーションと組み合わさることで、人は「新しいもの」を生み出していく。時としてそれは突飛で、驚きとともに「なぜこんなものを?」と首をかしげたくなることもある。 「世界最小のアニメ−ション」というものをご存じだろうか。銅板の上に炭素分子で絵を描き、分子を動かしながら特殊な顕微鏡でひとコマずつ撮影して、1分ほどのアニメーションに仕立てたものだという。1枚の絵の実寸は10万分の4ミリ程度で、まさしく世界最小。ギネスブックにも登録されているそうだ。
いったい何のために…という気にもなるが、この技術は実際に電子機器の開発に活用されるというから、決して無駄になるものではない。
重厚なつくりのケースに収めた、ヴァシュロン・コンスタンタン「Kalla」。「王族の時計」とも呼ぶべき気品と風格を漂わせている。
時計造りの分野にも、そうした「突飛なもの」が数多く存在する。この宝飾腕時計「Kalla」もそのひとつだ。一本のブレスレットのようにシンプルなシェイプの中に薄く小さなムーブメントを収め、本体からバンドまでのすべてを埋めつくすきらびやかな宝石。ひとつひとつが粒揃いであり、しかも1ミリの乱れもなくきれいに並んだ様はまさに圧巻だ。これほどのものとなるとすでに「ウォッチ」ではなく完全に「ジュエリー」であり、超豪華なアクセサリーと言っていい。
もともと腕時計というものは、宝石商や宝飾業者が多く手がけていた。小さな宝石を正確にカットし、磨き上げ、指輪やネックレスに仕立てるためには、ミクロ単位の繊細な作業が必要になる。
それは腕時計も同じことだ。正確な時を刻むという最低限の機能を満足させるためには、精密な金属加工の技術が必要不可欠だから、そうした技術に長けた宝飾職人たちの手によって、初期の腕時計は作られていた。そしてさらに「より軽く小さく、美しく」という、例の好奇心と探求心が顔を出し、そこにイマジネーションが加わって、見る者を感嘆させずにはおかない、こうした精緻な宝飾時計が生まれていったのだろう。

Venture into Unknown World
That Gives Many Inspiration

まだ見ぬ何かが人に驚きと感動を与えてくれる

この時計の製造元はヴァシュロン・コンスタンタン。現在ではパテック・フィリップ、オーデマ・ピゲとともに三大高級ブランドとして君臨しているが、この「Kalla」のような宝飾時計やスケルトンタイプの時計で広く知られる存在だ。いずれも製作にはとてつもない時間がかかるうえ、そのほとんどが手作業である。小さな宝石を磨いて大きさと形を揃え、それを金の腕輪にひとつひとつ埋め込んでいく。その並びに少しの歪みもあってはならない。また時計本来の機能を持つムーブメントにしても、きわめて小さく薄く仕上げなくてはならない。そのため設計の段階から多くの試行錯誤を繰り返し、検討に検討を重ねていく。時計としての機能を犠牲にすることなく、パーツの強度を勘案しながら図面を引く。もちろん目指す寸法にぴたりと収めることは絶対条件で、場合によってはパーツ一つ一つの「美しさ」までも表現しなくてはならない。 こうした多くの要求を満たすため、ほぼすべてのパーツが人の手によって削られ、磨かれて、丹念に組み立てられていく。
時を知るという、時計本来の働きを満足させるだけならば、なにもそこまでする必要はない。だが「そこから先へ」と足を踏み出さずにいられないところが、時計造りに携わるものの好奇心と探求心なのだろう。そんな半ば本能的な人間の欲求が、いつの時代でも「新しい何か」「素晴らしい何か」を生み出し、人々に驚きと感動とを与えてくれるのだ。
日本では長らく「バセロン・コンスタンチン」と呼ばれてきた、スイスの老舗メーカー。継続的に時計を作り続けてきた企業としては世界最古ともいわれている。今回取り上げた「Kalla」のような宝飾時計のほか、高精細な細工を施したスケルトンモデルで名高い。その細部の精密な仕上がりは、超高級品の名にふさわしい。
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