この時計の製造元はヴァシュロン・コンスタンタン。現在ではパテック・フィリップ、オーデマ・ピゲとともに三大高級ブランドとして君臨しているが、この「Kalla」のような宝飾時計やスケルトンタイプの時計で広く知られる存在だ。いずれも製作にはとてつもない時間がかかるうえ、そのほとんどが手作業である。小さな宝石を磨いて大きさと形を揃え、それを金の腕輪にひとつひとつ埋め込んでいく。その並びに少しの歪みもあってはならない。また時計本来の機能を持つムーブメントにしても、きわめて小さく薄く仕上げなくてはならない。そのため設計の段階から多くの試行錯誤を繰り返し、検討に検討を重ねていく。時計としての機能を犠牲にすることなく、パーツの強度を勘案しながら図面を引く。もちろん目指す寸法にぴたりと収めることは絶対条件で、場合によってはパーツ一つ一つの「美しさ」までも表現しなくてはならない。
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こうした多くの要求を満たすため、ほぼすべてのパーツが人の手によって削られ、磨かれて、丹念に組み立てられていく。
時を知るという、時計本来の働きを満足させるだけならば、なにもそこまでする必要はない。だが「そこから先へ」と足を踏み出さずにいられないところが、時計造りに携わるものの好奇心と探求心なのだろう。そんな半ば本能的な人間の欲求が、いつの時代でも「新しい何か」「素晴らしい何か」を生み出し、人々に驚きと感動とを与えてくれるのだ。
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